傷ついたミントをベイエリア５５に搬送した巽兄弟。
　モンドとナガレは早速、ミントの被害状態をサーチし始める。
　そして中途半端に飾り付けされた研究所でマトイ達は、
　室内を行ったり来たりするショウを気づかっていた。
マトイ　　「ショウ、落ち着けって」
ショウ　　「落ち着いてなんかいられっかよ！　俺のせいでミントは・・」
マトイ　　「お前のせいじゃない。あの時、誰が側にいたって
　　　　　　同じ状況になっていたさ」
ショウ　　「そんなことないっ！　俺がもっと周りに注意を払っていれば
　　　　　　ディーナスの存在にも気づいて、ミントを守ってやれてた
　　　　　　はずなんだっ！！」
マトイ　　「・・・自分を責めるな、ショウ。きっと大丈夫だから・・・」
ダイモン　「そうだよ！　父さんとナガレ兄さんが絶対治してくれるよ！」
マツリ　　「うんっ！　治ったら、みんなで父さんの誕生会やろ！　ねっ！」
ショウ　　「・・・・・・・」

　ウィーーーン・・。ベイエリア５５からナガレが戻ってきた。
　その顔はいつにも増して真剣な表情だ。
ショウ　　「ナガレ兄ぃ、ミントは・・・ミントは大丈夫なんだろ？！」
ナガレ　　「ショウ・・・」
マトイ　　「そんなに・・・ひどいのか？」
ダイモン　「でも治るんでしょ？　ナガレ兄さん！」
マツリ　　「ナガレ兄ちゃん！！」
ショウ　　「頼むよ、ナガレ兄ぃ・・・あいつを治してやってくれよ！
　　　　　　ミントに言わなきゃ・・・『ありがとう』って言いたいんだよ！」　　　
　ショウは、ナガレにすがりながら叫んだ。
　ナガレは、静かに答えた・・・。
ナガレ　　「ショウ。そしてみんな、落ち着いて聞いてくれ」
ショウ　　「ナガレ兄ぃ・・・」
ナガレ　　「・・・ミントは治すよ、必ず・・・」
ショウ　　「ナガレ兄ぃ！　ホントか？！　治るんだな！」
ナガレ　　「・・・でも」
　ナガレの言葉に、一瞬マトイ達はホッと胸を撫で下ろしかけたが、
　次の言葉は彼らにとって辛い一言だった。
ダイモン　「でも？　・・・なんなのナガレ兄さん」
ナガレ　　「でもミントは・・・・今までのミントとは違うミントになる」
４人　　　「え・・・？」
マトイ　　「どういうことだ、ナガレ。意味がよくわかんねぇぞ」
ナガレ　　「ミントは元々戦闘用ロボじゃないから、装甲が強いわけじゃない。
　　　　　　ディーナスの突発的な攻撃をまともに受けたらただじゃ済まない
　　　　　　のは当然だ。現に８０％の被害を受けてる。
　　　　　　だからミントを治すには、初期開発段階から組み替えるしか
　　　　　　方法はないんだ」
マツリ　　「最初から組み替えるなら、新しいミントに生まれ変わるってこと？」
ダイモン　「でもミントはミントなんでしょ？」
ナガレ　　「形はミントそのものだよ。でも・・・頭脳が変わるんだ」
ショウ　　「頭脳が変わる？」
ナガレ　　「父さんが言うミントの初期段階は、ただのコンピュータロボと
　　　　　　同じで、データ通り的確に反応するだけのロボットだった
　　　　　　らしいんだ・・・」
マトイ　　「・・・それじゃ、つまり・・・俺達の知ってるミントは・・・
　　　　　　心を持ったミントは・・・？」
ナガレ　　「ある日偶然に出来たものってことさ。原因もまだ解明もされて
　　　　　　いなかった・・・。念のためライナーボーイと同じタイプの電子頭脳
　　　　　　をミントにも乗せられるかどうか調べたが、なぜか相性が合わない」
ショウ　　「・・・・ミントが・・・ミントじゃなくなる？　それじゃあ、前のミント
　　　　　　には会えなくなっちまうのかよ！？　俺のことを守ってくれたこと
　　　　　　も、俺達と過ごしてきたことも忘れちまうってことかよっ！！」
ナガレ　　「そういうことになる・・・」
ショウ　　「なっ・・・・なんとかしろよ、ナガレ兄ぃ！！　お願いだ！
　　　　　　元のあいつに戻してやってくれよっ！！」
ナガレ　　「・・・・・・」
ショウ　　「俺は嫌だからな、そんなの。絶対に嫌だからなっ！！」
マツリ　　「ショウ兄ちゃんっ！！」
マトイ　　「追うな、マツリ！」
マツリ　　「でもっ・・」
マトイ　　「・・・今は一人にしてやれ」

　ショウは家を飛び出し、胸が引き裂かれる思いで疾走した。
ショウ 　「（ミント・・・・ミントの心を・・・俺は消しちまった・・・・）」
　そしてもう一度、家の扉を開ける頃には、真夜中の１２時を過ぎていた。
　研究所は静まりかえっていたが、マトイ、ダイモン、マツリは、
　ショウの帰りをずっと待っていたかのようにソファーで寝息を立てていた。
　そんな兄弟達に申し訳ないと思いつつ、ショウは自分の部屋に向かおうと
　するが、ショウの背中にはマトイの声が響くのだった。
マトイ　　「待てよ、ショウ・・・」
ショウ　　「っ・・・マトイ兄ぃ・・・。ごめん、起こしちゃったな」
マトイ　　「はじめから寝てねぇから気にすんな。・・・それより腹減っただろ。
　　　　　　今、あっためなおしてやるよ。こっちに座れ・・・」
ショウ　　「・・・いらないよ。何も食べる気しないんだ」
マトイ　　「いーや、ダメだ。食うまで寝かせねぇからな。また突然、サイマ
　　　　　　が襲ってきたらどうすんだよ。スタミナ不足でヘマなんてしたら、
　　　　　　ゴーゴーファイブの名が廃るぜ」
　マトイはショウの身体を強引にテーブルの前に座らせる。
　ショウはマトイの優しさに触れたせいか、静かに肩を震わせ始めた。
ショウ　　「・・・もう、ヘマしてるよ、俺。あいつ・・・ミントを・・・
　　　　　　俺・・・守れなか・・・った。・・・守りたかった・・のに・・・
　　　　　　守らなきゃ・・・・いけなかったのに・・・っ」
マトイ　　「ショウ・・・・」
　マトイはショウの肩に手を置いた。
マトイ　　「バカッ・・・泣いたってなんにもならねぇだろ」
ショウ　　「・・・・」
マトイ　　「ショウ、俺達の力でなんとかしようぜ。ミントの心が偶然に
　　　　　　出来たものなら、今度もなんとかなるって！
　　　　　　思い出させてやろうぜ・・・俺達のこと。あいつも俺達の
　　　　　　大切な仲間だもんな！！」
ショウ　　「・・・マトイ兄ぃ・・・」
ダイモン　「そうだよ、ショウ兄さん！　信じようよ！！」
マツリ　　「ナガレ兄ちゃんも、今必死に修理してるんだから！」
ショウ　　「っ！　・・ダイモン、マツリ・・・いつから起きて」
マツリ　　「マトイ兄ちゃんの『待てよ、ショウ・・・』ってとこから♪」
ダイモン　「そうそう！」
マトイ　　「・・・ったく、起きてるなら起きてるって言えよな。
　　　　　　趣味悪ぃ〜よ、お前ら」
ダイモン　「だってさ〜、入り込む隙間ない雰囲気だったもんな〜」
　みんなの励ましにショウは微かな笑みを浮かべた。
　そして、その直後・・・ナガレが研究所に戻ってくるのだった。
マツリ　　「あ、ナガレ兄ちゃん！」
ナガレ　　「みんな起きていたのか・・・。ショウも・・・」
ショウ　　「ナガレ兄ぃ・・・さっきは・・・」
ナガレ　　「いいんだ、ショウ。
　　　　　　・・・それより・・・とりあえず、ミントの修理は終わったよ」